この「2chベストエロゲー」と「萌えゲーアワード」がすごい!

やっぱ世の中ブランド力は大切で、エロゲーの場合、その最たるものは「アニメ化」でしょう。大枚はたいてBDがぜんぜん売れなかったとしても、メーカーにとってはぜんぜんプラス……かも? たぶん?
とはいえエロゲー市場の縮小もあって、もうそうそう簡単には「アニメ化枠」は回ってこない。そこで重要性を増してくるのが「賞」。中でも有力なのが(ほかだと日本美少女ゲーム広告賞とか? すでに無いよね?)、もう6年だかそのくらい続いている「萌えゲーアワード(旧美少女ゲームアワード)」と、さらに長い「エロゲネタ&業界板主催 2011年 2chベストエロゲー」ですね。
両者の2011年度受賞作品を見ると……

●エロゲネタ&業界板主催 2011年 2chベストエロゲー 【Wiki】【2chまとめ】

01 WHITE ALBUM2 -closing chapter-
02 穢翼のユースティア
03 神採りアルケミーマイスター
04 グリザイアの果実 - LE FRUIT DE LA GRISAIA -
05 カミカゼ☆エクスプローラー!
06 ラブラブル 〜lover able〜
07 恋愛0キロメートル
08 天使の羽根を踏まないでっ
09 Hyper→Highspeed→Genius
10 euphoria

●萌えゲーアワード 2011 【公式】
金賞 グリザイアの果実 - LE FRUIT DE LA GRISAIA -
銀賞 神採りアルケミーマイスター
銀賞 カミカゼ☆エクスプローラー!

……以下、各部門賞はタイトルを書き写すのがしんどいため公式サイトを参照。ええっと、「個人サイトに取り上げられるのは心外」といった意思がないなら、どっかにテキスト版用意して置いてください。
部門賞金賞で目に付いたところでは、『あかときっ』『天使の羽根を踏まないでっ』『もろびとこぞりて』『女装山脈』『戦国天使ジブリール』『Empress』、それにFDの『神楽早春賦』『BALDRSKY DiveX』『るい智FD』が入っていますね。

上記から僕がプレイした(プレイ中含む)ものを抜き出してみると、
WHITE ALBUM2 -closing chapter-
穢翼のユースティア
グリザイアの果実 - LE FRUIT DE LA GRISAIA -
カミカゼ☆エクスプローラー!
天使の羽根を踏まないでっ
euphoria
・女装山脈
・るい智FD

となった。2chベストエロゲー上位10作の半分をプレイしていたということで、自分としてはずいぶんプレイしたという印象。旧作やノミネートされて無い作品も含めると、どう考えてもやりすぎだ。

さて、この2つの賞の上位作品はかなり食い違っている。その理由は簡単だろう。
WHITE ALBUM2 -closing chapter-』のLEAFや『穢翼のユースティア』のオーガスト、それにアリスソフトなどは萌えゲーアワードに参加していないから。この2社だけでなく、いわゆる大手ブランドはあまり参加していないのが現状で、純粋に「その年を代表する人気作品が選ばれている」とは言えないだろう。ただそれでも、ソフ倫加盟社のうちかなりのメーカーが参加しており、十分に意義がある賞となっていると思う。メジャーどころが外れたぶん珍しいところが入って面白いと言い切ってもいいぐらい。(……「もう賞など貰わなくても結構。逆にブランドイメージを損ねかねない」みたいなメジャーブランドの考え方には、正直疑問を感じる)
また先ほど「ソフ倫加盟社のうち」と書いたように、CSA(メディ倫)審査作品は萌えゲーアワード対象外。これは単純に、萌えゲーアワードがソフ倫主導で運営されているから。仕方が無いといえば仕方が無いが、残念なところ。今回の場合、クロックアップの『euphoria』がCSAタイトル。ほかだと……上位には入っていないけど、ニトロプラスアージュなんかがCSAですね。
補足しておくと、萌えゲーアワードはユーザー投票の上位3作品+実行委員会推薦1作品の4作品から各部門の金賞を選び出すという仕組みみたい。それで投票には、参加作品のうちいずれかを買うと入っているパスワードが必要。

過去の受賞作も簡単にまとめておくと……

●エロゲネタ&業界板主催 2011年 2chベストエロゲー
2010 素晴らしき日々 〜不連続存在〜 黄昏のシンセミア 戦女神VERITA
2009 BALDR SKY Dive2 "RECORDARE" BALDR SKY Dive1 "LostMemory" 装甲悪鬼村正
2008 スマガ G線上の魔王 るいは智を呼ぶ
2007 世界でいちばんNGな恋 キラ☆キラ カタハネ

●萌えゲーアワード 2011
2010年度 黄昏のシンセミア 戦女神VERITA 素晴らしき日々 〜不連続存在〜
2009 真・恋姫†無双 〜乙女繚乱☆三国志演義〜 真剣で私に恋しなさい!! ティンクル☆くるせいだーす
2008 G線上の魔王
2007 遥かに仰ぎ、麗しの

という感じで、どちらもそれぞれ納得がいくタイトルではないだろうか? あとから見返すと、萌えゲーアワードのほうが「それっぽい」かもしれない。特に、『かにしの』選ばずに『NG恋』『キラ☆キラ』『カタハネ』ってどんだけ尖がってるんだと。
特に参加条件が無く、言ってしまえば「購入ユーザー」じゃなくても参加できる2chベストエロゲーが、けっこうマニアックで玄人好みのラインナップになっているのも興味深いところ。『このライトのベルがすごい!』で言えば、ネット投票やモニター投票より、協力者票に近い傾向。売れた作品、有名な作品だけが受賞しても面白みに欠けるので、賞を盛り上げるにはこういうバラけ方も必要なんじゃないかと思うわけで。こうなっているのは、エロゲーの熱心なファンというのがそもそもマニアしか居ない狭い世界だからなのかも?
2011年の2chベストエロゲーも、LEAFオーガストみたいなトップブランドの入魂作に、クロシェット、SMEE(HOOKSOFT)、ういんどみるみたいな……何ていえばいいんだろう? 中堅というにはデカい気がするけどそんなにカリスマ性があるわけじゃないところの良作、それに抜きゲーメーカーであるはずのクロックアップが出した異色作と幅広い選択。ちょっと「あまり売れなかったけどトガってて魅力的な作品」のフォローが弱い気もするけど、これは2011年度絶対王者こと『WA2CC』に票を吸われまくった結果かな。集計の詳細を見ると、もう1位とかそういうんじゃなく、「『WA2CC』とその他大勢」みたいな圧倒的な支持率。

なんだか時間がなくなってきたので結論っぽいものを書き飛ばすと、
・どっちの賞も面白いので、注目しても良いんじゃない? 予約&新作購入だけが正義ってんじゃあ、新規ユーザーが入ってこなくなってエロゲーなくなるぜ? 現にエロゲーレビューって文化は滅んだでしょ?
・「発売後に賞とかあげても売り上げには関係ない」とか言いたがる人がいるけど、ブランドイメージってものを考えたほうが良いんじゃない? みんなブランド買いしてるでしょう? エロゲー雑誌が死に体というかよっぽどのマニアしか買わなくなり、エロゲー取扱店はどんどん消滅しつつある現状で「これが良作! 人気作!」みたいなのを広められるチャンネルは貴重。
ソフ倫&CSAが足並みそろえた陵辱モノ、調教モノ排除の結果、大作は対外的に打ち出しやすい作品(萌え系純愛やシナリオ重視作)ばっかりが残って、ランキングとかはやりやすくなったね。完全な抜きゲーになると個人の嗜好がすべてで順位付けに意味が無いし、偉い人?に見せにくいランキングになってしまう。とは言うけど、現状の規制路線には反対。海外の圧力とか言っても、もうちょい戦えたんじゃねえ?(一部の小さい方面の嗜好は難しいかも) それにそろそろほとぼり冷めたんじゃないですかね?
というところ。寝ます。

とある科学の重機動兵器 鎌池和馬『へヴィーオブジェクト』

ヘヴィーオブジェクト (電撃文庫)

ヘヴィーオブジェクト (電撃文庫)

ええと、無理やり更新してみるテスト。
ボーイミーツガールIN戦場(素直クール入り)といった按配ですこぶる面白かった。いや、メインになるのは男2人の掛け合いだからボーイミーツボーイ? いや、そっち系の要素はないけど!
ハードまわりというかSF公証というか科学まわりは豪快かついい加減だけど、その無茶っぷりがまた新鮮な設定を産み出してる気がする。レーザーで空気を膨張させて推進とか(いや、密閉した状態でやって「レーザーエンジン」とかそんな感じにしたほうが何万倍効率いいことか)、プリント基板伝送とか。あ、今度のレールガンはマッハ3じゃなくマッハ10になってました。個人的にはまだ遅いと思……そういう趣旨じゃなくて、つまり、面白かったって言いたいだけなんですよ。繰り返しになるけど、科学描写もここまでぶっ飛んでるとセンスオブワンダー的な何かを感じる。無駄にデカいものが高速戦闘するってのはそれだけでいいものです。
主人公側の政体が実は君主制で、相方のヘイヴィアが実は貴族だとか設定の端々に変なひねりが効いてる。それになにより、電撃というよりもファンタジアを思わせる痛快青春バトルモノなのに、裏では何百何千単位で死人が出てたりするのがタチ悪い感じで好き。

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C76 2日目 お買い物


オリジナルな同人ノベル10本ちょい。手当たり次第買い集めようかと思っていたのだけど、今年はかなりサークル数・作品数が増えていて(いや、ただの印象ですが)ごく一部しか入手できなかった。まぁ、プレイすることを考えるとこのくらいがちょうどいいかな?
しっかり作られた作品が多くなったぶん、平均価格も上昇傾向か? といっても、だいたい1500円ぐらいだけど。

特に期待しているのは、
・WEB体験版がめったやたらと楽しかった『EDEN』
エロゲー業界の闇に迫った?『厨恋』
ラノベ作家な七月隆文氏が一人で作ったという『天使郷』
・やっと続きが出た『Omegaの視界』
あたり。


ついでにガンダムさん。じつにガンダムでした。

極上のSF短編集『ベガーズ・イン・スペイン』

ナンシー・クレス『ベガーズ・イン・スペイン』ハヤカワ文庫

ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)

ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)

これはちょっと思い入れがある作品。というのも「SFを原書で読むとカッコイイ! モテル!」とか勘違いしていた時期があって、その頃に読んだアンソロジー・ペーパーバックに、本書収録の短編「眠る犬」が入っていたから。なんだか分からんなりに感動したりして、調べてみるとこの短編が、「無眠人」シリーズというものの一部だということが分かって、ずっと邦訳を楽しみにしていたわけです。
しばらく後に、そのペーパーバックは『遥かなる地平』というタイトルで邦訳されてるので、「眠る犬」を読むのは3回目なのか。まあ、それはどうでもいいですが、この『遥かなる地平』というアンソロジーも意味わからんぐらい豪華なメンツがそろっててすさまじく良質なので、ぜひ。これに入ってるシルヴァーバーグの「永遠なるローマ」シリーズも翻訳されねえかな。
……というわけで、これはナンシー・クレス「無眠人」シリーズの一部を含んだ中短編集です。正直なことを言うと、複数訳者による短編集という形になったのはちょっと残念。本当に期待してたのは同名の長編『ベガーズ・イン・スペイン』を一巻とする三部作の訳出だから。
でも、読み始めてみるともう、ぶっ飛んだね、ボブ! 解説に「短編の名手」とあるとおり、どの作品も信じられないぐらい上手くて速くて力強い。上質な短編小説というのはこういうものだ! という具合にやわらかい語り口で奇妙な話を展開して、最後でググっと落とす。このラスト1ページが悪魔的な完成度で、最後の段落を読むだけでも名作だと伝わるんじゃないかというぐらい。
似た作風の持ち主としては、テッド・チャンだろうか? でも、クレスのほうがずっと叙情的で泣かせせる。そのぶん、チャンのほうがアイデアが豊かでSF的な奇抜さがあるけど。
ナノテクであったり、宇宙戦争であったりに翻弄される人々の姿を情感たっぷりに描き、なんとも言えずホロ苦い結末に持っていく。複雑怪奇なおとぎ話、といった感じかも。「泣けるんだけど、泣いて終わりにできるほど単純話じゃないよな」という感じがするところが。うん、意味わかんない感想でゴメンナサイ。僕が悪かったです。
つまり、いや、つまりじゃないな。やはり一番印象深かったのは、表題の中篇「ベガーズ・イン・スペイン」(ヒューゴー、ネビュラ、その他いっぱい受賞)で、これが読めただけでも十分モトはとれた。遺伝子操作によって生まれた超人たちが、その優越性によって迫害されていくというヴォークトの『スラン』以来わりとありがちなストーリーなんだけど、ここまでメロウに語れるのはクレスだけでしょう。読んでて、こう「周囲にねたまれる無眠人たちの気持ち」「置いていかれる普通人の気持ち」両方が伝わってくるんですよ。それに、繰り返しになるけど話の〆かたが神がかり。あとは、全く異なる文明との衝突を描いた「戦争と芸術」、バレエと遺伝子操作を絡めた「ダンシング・オン・エア」もかなり好み。僕の原体験になった「眠る犬」は言わずもがな。
どう終わればいいのか分からなくなったので、とりあえず「ベガーズ・イン・スペイン」のラスト部分を引用しておきますね。

 そんなことを考えたとたんに、リーシャは軽さに包まれた。浮き上がっていく喜びの泡ではない。考察によるはっきりした明確さでもなく、べつの何かだ。日射しが、やわらかに温室のガラスごしに射しこみ、子どもふたりがそこを出たり入ったりしている。彼女はいきなり自身が軽く感じられた。浮き上がるのではなく、自分が半透明な媒体となって、そこを日射しが通り抜け、さらに進んでいく。
 彼女はぐっすり眠りこんだ女と怪我を負った子どもを乗せたまま、夜を抜けて東へ、州境へと車を走らせつづけた。

本編とのつながりに技あり『火の国、風の国物語3』

師走トオル火の国、風の国物語3―星火燎原』富士見ファンタジア文庫

ドラゴンマガジンに連載されていた短編に加筆したもの。ジェレイドを主人公に、反乱軍が決起するまでを描いている。
正直に言って、長編シリーズの間にはさまってくる短編集や外伝のたぐいは、あまり好きじゃない。いや、別に嫌いなわけでもないんだけど、それより本編の続きが読みたいし、「必要悪」とかそのくらいにしか思えないんだ。
なんだけど、この『火の国、風の国物語3』は、ものすごく丁寧に本編に溶け込ませてあって、違和感なく読めた。言われなければ連載分の短編をまとめたものだとか気が付かないぐらいだ。「過去なんて振り返ってるばあいじゃねーぜ」という僕みたいなワガママバディにも気を使ってくれたのかもしれない。
連載時からどのくらい変更されているのかはわからないけど、ちゃんと2巻から続くかたちで始まってるし、最後も本編の時間軸にもどって4巻へのヒキを作ってある。
基本的には、ジェレイドがアレスに己の半生を語り聞かせるというスタイルなんだけど、過去の話を「登場人物による語り」として本編に入れ込んでくる手法には、なんとなくアニメの総集編の影響を感じた。知らないだけで、ラノベでも結構多用されているのかもしれないけど、けっこう新鮮だった。

感想リンク(reclips)

いい感じに重厚さが出てきた『火の国、風の国物語2』

師走トオル火の国、風の国物語2―風焔相撃』富士見ファンタジア文庫

「あとで感想を書く」置き場が破綻寸前で、このままだとブログを閉じるしかなくなりそうだったので、とりあえず1冊ずつでも書くことに。実のところすでに5巻まで読んでしまっており、その後さらに10冊は他のものを挟んでいるので感想が書きにくくてしょうがない。
うん、今読んでる『ミスマルカ興国記3』も楽しいです。気になるところもあるけれどマヒロ王子のキャラが……じゃなくて、2巻では反乱軍側の描写にも厚みがでてきて、いよいよ「火の国、風の国物語」というタイトルの示すものが出てきた感じ。
普通に考えると、これはジェイドのほうが主人公よね。貧農を解放するために立ち上がり、知略だけで大貴族達に立ち向かっていくとか、いいとこもって行きまくり。それだけに、バランスのとり方が難しそうで不安だったのだけど、なんというか堅実で凄くしっかりしてるのよね。ハデハデな展開が目を引くけど、それだけじゃない。
アレスとジェレイド、それぞれに戦わなければならない理由があり、たぶん風の戦乙女にも別の理由があるんだろう。まあ、ジェレイドに比べると、アレスなんかただの殺人鬼というのも確か。それでもアレスがバッサバッサと斬りまくってこそなのシリーズだと思うので、今後もこのバランスを保ってほしいもの。

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