本編とのつながりに技あり『火の国、風の国物語3』

師走トオル火の国、風の国物語3―星火燎原』富士見ファンタジア文庫

ドラゴンマガジンに連載されていた短編に加筆したもの。ジェレイドを主人公に、反乱軍が決起するまでを描いている。
正直に言って、長編シリーズの間にはさまってくる短編集や外伝のたぐいは、あまり好きじゃない。いや、別に嫌いなわけでもないんだけど、それより本編の続きが読みたいし、「必要悪」とかそのくらいにしか思えないんだ。
なんだけど、この『火の国、風の国物語3』は、ものすごく丁寧に本編に溶け込ませてあって、違和感なく読めた。言われなければ連載分の短編をまとめたものだとか気が付かないぐらいだ。「過去なんて振り返ってるばあいじゃねーぜ」という僕みたいなワガママバディにも気を使ってくれたのかもしれない。
連載時からどのくらい変更されているのかはわからないけど、ちゃんと2巻から続くかたちで始まってるし、最後も本編の時間軸にもどって4巻へのヒキを作ってある。
基本的には、ジェレイドがアレスに己の半生を語り聞かせるというスタイルなんだけど、過去の話を「登場人物による語り」として本編に入れ込んでくる手法には、なんとなくアニメの総集編の影響を感じた。知らないだけで、ラノベでも結構多用されているのかもしれないけど、けっこう新鮮だった。

感想リンク(reclips)