OVERDRIVE『キラ☆キラ』 感想(になるはずだったもの)

まず、微妙なタイトルが示すように、「感想」を書くことができなかったことをお詫び申し上げます。『キラ☆キラ』の感想・批評・レビュー・紹介、その他それに類するものを求めていらっしゃった方へ、帰れ。


ちょっと昔、ジャムセッションに顔を出したり、まれにライブに出させてもらったりと音楽界隈をウロウロしていた時期がありました。僕自身は、本気でミュージシャンを目指していたわけでもなく、というかかなりなめていて練習もほとんどしていなかったのだけど、周りには音楽に賭けて、いろいろなものを得たり、失ったり、失ったり、失ったりしている人が少なからずいたわけです。そんなわけで、『キラ☆キラ』の後半部については、他人事とは思えず、知人のことと重ねて見てしまった。
本当なら、瀬戸口の過去作品とのテーマ的な関連やら、以前にも増してドストエフスキーだったことやらを書きたいのだけど、とてもそんな気分にはなれないので、代わりに昔話をさせてもらいます。

あるとき、とあるドラマーと知り合った。知り合ったとき、彼はとあるインディーズでは名の知られたバンドを脱退した直後だった。それから数年後、彼が入院したという話を聞いた。長年の不摂生と過労により、脚の骨が腐り一部を切除することになったのだという。ドラマーとしては、致命的な、話だと、思った。
その後も、彼が元居たバンドは人気を伸ばし続け、現在ではメジャーに所属し、多くのファンを抱えている。しかし、一時期所属していたドラマーについて知っている人は少ないだろう。
「やっぱり、今のバンドにはそのうち飽きちゃうと思う。それなりにキャリアがあるからね…」
そんなことを言いながら、ウォッカを呷っていた姿を思い出す。

独特のセンスを持ったベーシストが居た。彼は、強烈なパフォーマンスで一部からカリスマ扱いされていたボーカルに気に入られ、そのバンドに所属することになる。そのバンドは、いわゆるバンドブームのころからカルト的な人気を持っており、テレビ出演なども果たしていた。ともかく、当時の僕にとっては憧れのバンドのひとつで、知人がそこに参加することをしってずいぶんと驚いたものだ。
後に、彼が加入するきっかけとなったのは、前任のベーシストの自殺だと知った。噂によると、ボーカリストのあまりに厳しすぎる音楽観、半ば拷問にも似た激しい練習についていけず、自ら命を絶ったのだという。
バンドは、彼が加入した後も、別のメンバーの失踪などのトラブルを巻き起こしながら、常に緊張感を持ったライブを続け、そして解散した。ベーシストを含め、所属メンバーのメンバーの多くは、現在でも音楽活動を続けている。

ライブのあと、声をかけられたことがあった。現在のメンバーの一人が実力不足なので、代わりに入らないかという誘いだった。自信がないというか、まったくありえない話だったので、曖昧に断った。なにせ、そのときの僕は、ほぼまったく演奏できない楽器を、とにかく目立つことだけを考えて適当に鳴らしていたのだ。相手の本気の目が、とにかく怖かったのを覚えている。
そのバンドが、その後どうなったのかは、まったく知らない。

そんな、昔の出来事を思い出してしまった。