西尾維新『零崎曲識の人間人間』講談社ノベルス

零崎曲識の人間人間 (講談社ノベルス)

零崎曲識の人間人間 (講談社ノベルス)

戯言シリーズ」のサブキャラクター、零崎一賊にスポットをあてた「人間シリーズ」の三作目。今回は、一賊唯一の禁欲主義者、『少女趣味』の零崎曲識にまつわる短編4本が収録されている。

本編「戯言シリーズ」でも感じたことだけど、西尾維新は「すでに死んだ」キャラクターの「活かし方」が上手い。死んだときにはごく普通のやられキャラだったのが、後の語りによりどんどんと肉付けされていき、ラスボスクラスのカリスマキャラにのしあがるなんて、誰が予想しただろうか? ……誰のことなのかは一応伏せておきますね。死後その口癖がフィーチャーされた○○子ちゃんも大好き。まったく、西尾維新の死人の雄弁さには驚くほかない。
この「人間シリーズ」のキャラクターたちも、そのほとんどが本編ではすでに死亡済みであり、この物語は、あらかじめ将来の死が約束されたキャラ同士の人間ドラマなわけだ。
この本に収録された物語はいずれも短編から中篇の短いものだが、その死によって「人間シリーズ」のみならず「戯言シリーズ」とも結びついている。…このキャラクターはあそこで死んだ…あ、このキャラクターも…、などとシリーズ全体を回想し、感慨にひたりながら読むことができた。
零崎双識、零崎人識、そして哀川潤萩原子荻といったおなじみのメンツが今回も活躍しており、両シリーズのファンなら間違いなく楽しめるだろう。個人的には双識萌えです。