田中ロミオ『人類は衰退しました』ガガガ文庫

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

かつて人類と呼ばれた種は衰退期を迎え、地球の片隅で細々と生き残るのみとなっていた。代わって地球の主役となったのは、体長10cmほどのちっちゃくてお菓子が大好きな「妖精さん」たち。妖精と人間の間を取り持つ調停官となった主人公は、この世界の大きな謎――人類はなぜ衰退したのか? 妖精さんとは何なのか? を中途半端に追求したりしなかったりしつつ、妖精さんと戯れて過ごすのだった。

あの田中ロミオラノベデビュー作ということで、期待したり危惧したり心配したりしていたのですが、予想以上に面白かった。ロミオはやっぱりエロゲのほうが向いてるんじゃないの? というかエロゲ作ってくださいよ! と多くのエロゲファンを嘆かせつつ発売された甲斐があったというべきか。
まず主人公の女の子の性格がいい。いや、いい子というわけではなく、まさに「いい性格してる」という感じで、好奇心が強いわりに小心で人見知り、さらに怠惰で楽をすることばかり考える。つまり、ちょっとダメなひとだ。このゆるーくてダメな感じの一人称が、たいへん感情移入しやすく心地いい。
…この主人公、名前はないのだろうか? 作中にはまったく出てきていないような気がする、というか人間の人名はいっさい出てきてないような。人類が衰退して妖精さんに主役の座を譲り渡したことを暗示するために、あえてそうしてるのかな。