佐藤大『脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク』ガガガ文庫

脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク (ガガガ文庫)

脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク (ガガガ文庫)

舞台は、大正から戦前の昭和のイメージを持つ異形の東京。どこからともなく放射される脳R電波に犯された人間は、体中から触手を生やした怪物と成り果てる。ゆえに、脳R人間は処分しなければならない。脳Rをブチ殺すことに異常な執念を燃やす中央機密局(ギュル)脳R対策員・ギヤマと、そのパートナーで妄想癖のある女子高生兼共振者・シイの、カストリ雑誌風猟奇趣味恋愛バトルストーリー。

夢野久作の「人間レコード」および「少女地獄」を原作とする跳訳ライトノベルだそうです。原作とは言っても、設定やストーリーにはたいしたつながりはない。単語やシーン、台詞、そして雰囲気を借りているといったところ。夢野久作を知らなくても問題なく楽しめるでしょう…というか、僕も『ドグラ・マグラ』しか読んだことがなかったので、青空文庫で前述の2編を読み、確認してみました。
とりあえず、わんぱくによる表紙絵がエロイですね。ええ、これのために買ったようなものです。描かれているキャラは、ギヤマに恋をして日々妄想にふける頭のゆるい女の子・シイ。つまり、絵だけでなくなかなかエロイキャラ。しかし、ギヤマは脳Rを殺すことしか頭になく、シイの脳Rを探し出す特殊能力を利用するだけで、なかなか恋愛展開にはならないのであった。
シイのエロさと、猥雑なトウキョウの街が魅力的な作品。

夢野久作「人間レコード」青空文庫
ディックやウィリアム・ギブソンを先取りした陰鬱なスパイSF。短くてすぐ読めるので『脳Rギュル』の予習にもいいかも?

夢野久作「少女地獄」青空文庫
こちらはやや長いので、ディスプレイで読むのはあまりオススメできない、というか目が疲れました。