瀬尾つかさ『クジラのソラ 03』電撃文庫

クジラのソラ〈03〉 (富士見ファンタジア文庫)

クジラのソラ〈03〉 (富士見ファンタジア文庫)

ワールドグランプリ準決勝、〈ジュライ〉の前に最強の敵が立ちふさがる。


かつて《ゲーム》によって家族を失った聖一と冬湖。彼らが戦う気になった理由、そのモチベーションについては、あまり語られていない。でもきっと、単純に《ゲーム》がやりたいからなんだろう。一度はトップに立った聖一、自身の才能を自覚しつつある冬湖。ギアをトップに入れて全力疾走する快感を覚えたら、そうそう抜け出せるものではない。このシリーズの戦闘、つまり《ゲーム》場面は、集中して能力を出し切ることの快感を感じさせてくれる。
……3巻では、彼らがよりどころとしていた《ゲーム》そのものが変質し、崩壊していく。そして、仲間のためとがんばり続けた先には更なる悲劇が待っている。全四巻ということで、起承転結の転に当るこの巻は、それに相応しく盛りだくさんの内容。かなりはしょって飛ばしている部分もあるが、上述した聖一と冬湖が戦う理由のように、行間から想像させるつくりになっており詰め込みすぎだとは感じなかった。むしろ、この勢いが楽しい。