瀬尾つかさ『クジラのソラ 04』電撃文庫

クジラのソラ〈04〉 (富士見ファンタジア文庫)

クジラのソラ〈04〉 (富士見ファンタジア文庫)

《ゲーム》を巡る陰謀はとりあえずの終局を迎えた。あとに残されたのは、傷つき、絶望した〈ジュライ〉のメンバーたち。雫は、もう終わってしまった《ゲーム》をもう一度終わらせるために、ばらばらになった仲間たちを取り戻すために走り始める。そんな彼女の前に、あこがれ続けた人物が立ちふさがる。


このシリーズには、いくつかの古典SF作品へのオマージュが込められている。もっとあるのかもしれないけど、とりあえず僕が感じ取れたのは『幼年期の終わり』と『ソラリスの陽のもとに』の二作で、これらはいずれも、人類とは? 宇宙とは? なんていう超壮大なテーマを扱った作品。そんなマクロにもほどがあるテーマを、ラノベらしく、雫の怒りや冬湖の戸惑いといったキャラクターの心情で表現しきったのが『クジラのソラ』のすごいところ。
完全なハッピーエンドだとは言えないながら、雫が強引に中央突破をかけて複線を回収して行き、最後に智香の笑顔で〆る。そんな、さわやかな完結編でした。