らっきょ版の「幻視同盟」『空の境界 未来福音』

奈須きのこ武内崇空の境界 未来福音』竹箒(同人流通)
ちょっとこの構造というか仕組みというか造本はどうなんだろう?


一見しっかりしたハードカバーに見えるけれど、開いてみると裏表紙の紙一枚でつながっている状態。開きやすいという利点はあるものの、破れてしまいそうで持っていて不安になる。ここまでしてハードカバーにする意味があるんだろうか? と疑問に思ってしまった。
でも、内容はガチなので『空の境界』好き、または『月姫』好きにはわりと強めにオススメしたい。
空の境界』は『月姫』の原点とも言われている作品で、世界観やキャラクターなどに共通する部分が多々ある。そして、外伝・続編にもやはり通じるところがあり、『月姫PLUS-DISC』に収録された「幻視同盟」を思わせる内容になっていた。まず、主役をつとめるキャラクターの設定が非常に近く、苗字も「瀬尾」と同じだ。また「未来視」というテーマも共通のもの。そういえば、『Fate/hollow ataraxia』も『月姫』のファンディスク『歌月十夜』と近い位置にある作品だったし、本編とファンディスクの関係には何か猛烈なこだわりがあるのかもしれない。ということは、やはり『月姫』『空の境界』と強い関係を持つとされる『魔法使いの夜』は『Fate/Zero』みたいな企画なんだろうか。楽しみすぎる。
……と、脱線してしまった。ともかく、頭の中が『月姫』でいっぱいだった当時のことを思い出しながら読んだせいもあるかもしれないけれど恐ろしく楽しかった。「アーネンエルベ」とか聞くだけでじゃっかん感動してしまう体質なので冷静な評価ではないと思うけど、冷静な評価なんてどうでもいいよね。……よくないかな。
本編『空の境界』は読みやすいとは言いがたいというか、小説書きに慣れてない感じがするものだったけど、この『未来福音』では筆力が明らかに上がっている。カットバックや視点の変更を多用する複雑な構成は相変わらずなので、やはりさらっと読めるという感じではないけれど。また、同時収録の武内崇によるマンガも式や黒桐らキャラクターの表情が鮮やかで、やはりこのコンビにはどこか代えがたい魅力があるのだなあと再認識刺さられた。

ついでに、「幻視同盟」は評価版としてWEB上で無償公開されており、現在でも当時の配布サイトから手に入れることが可能。

「幻視同盟」ミラー配布ページ