優しい世界にさよなら『とらドラ9!』

竹宮ゆゆことらドラ9!』電撃文庫

友人以上、恋人未満の家族のような関係。『とらドラ!』という作品の魅力のひとつは、竜児と大河の間の不思議な関係にある、もしくは、あった。でも、それは、周囲の人々、たとえば亜美から見れば、恋愛から逃げ回ってるだけの薄っぺらで偽善的な関係だった。
物語は、8巻からまた大きく動き始め、竜児と大河の擬似家族というシェルターは、恋愛という暴力にさらされて崩壊していく。甘く優しい世界は終わり、竜児も大河も、もうお互いへの想いを隠し切れない。
これまで築き上げてきた世界を一気にひっくり返し、恋愛という台風が全てを巻き込んでいく壮絶な展開に震えっぱなし。この嵐の後には、ぺんぺん草すら残るまい。……というのは言いすぎかもしれないけど、いつ完結してもおかしくない緊張感が全篇に漂う。みのりんとの関係にもひと段落ついたので、もはや逃げ場なしだ。
竜児と大河が、亜美やみのりんたちの気持ちを理解し始め、ひいてはそれが二人の関係を変化させていく。そんな意味では、亜美とみのりんの巻だったのかもしれない。亜美とか出番がかなり少ないけど!

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