瀬尾つかさ『クジラのソラ 01』電撃文庫

クジラのソラ 01 (富士見ファンタジア文庫)

クジラのソラ 01 (富士見ファンタジア文庫)

10年前、地球は異星人の艦隊の前に戦わずして降伏した。ゼイと呼ばれる彼らが地球人類に望んだことは、《ゲーム》と呼ばれる艦隊戦ゲームをプレイすることだった。《ゲーム》で優勝した国家には異星の技術が供与される。そして、優勝チームのメンバーたちは、異星人の艦隊に乗り宇宙の彼方へと旅立つことになる。
桟敷原雫は、3年前に優勝者しゼイとともに消えた兄を追うために、《ゲーム》への執念を燃やす。そして、雫と同い年――15歳にして、すでに伝説的なメカニックである門倉聖一を仲間に引き入れようとする。


おもしろい!と手放しで賞賛したくなるSFラノベの良作。
この世界の《ゲーム》は、決められたポイントを使って艦隊を造り、恒星系を奪い合うというもの。今で言うと、リアルタイムシミュレーションの『STARCRAFT』みたいなものだろうか。
ワールドグランプリの優勝者は異星人の船に乗って地球を離れるということだけど、これは逆からみると「ゼイに連れ去られる」ということ。主人公格の2人、桟敷原雫と門倉聖一も家族を《ゲーム》に奪われている。このシリアスでいかにも裏がありそうな重い設定が、ゲームバトルをさらに盛り立ててる。優勝してめでたしめでたしというわけにはいかなそう。
キャラクターも、クセがないというか、嫌味がないというか…あまり褒めてるように見えないかもしれないけど、このストーリーにはこういうキャラだよなという感じ。派手さはないけど好印象というのは、この作品全体についてもいえるかも。