竹宮ゆゆこ『とらドラ!6』電撃文庫

とらドラ! (6) (電撃文庫 た 20-9)

とらドラ! (6) (電撃文庫 た 20-9)

文化祭から数週間、季節は冬に移り変わり生徒会選挙が始まろうとしていた。しかし、主役となるはずの現副会長・北村は……なぜか、グレていた。いきなり髪を金髪に脱色し、ノーフューチャーに遅すぎる高校デビューを飾ろうとする北村の運命やいかに?


まさかの北村巻。なにしろ男メインなので花はないけれど、これはおもしろい。全然おもしろい。
竜児は母子家庭、大河は家庭崩壊、亜美はストーカー被害で仕事を中断してたりと、『とらドラ』の登場人物は、みんな明るいとは言いがたい背景を持っていて、しかも、やってることといったら上手くいかない恋愛について悩んだりのた打ち回ったりなんてことばかり。
そのストレートにやったらどんよりドヨドヨなお話を、豪快にして繊細な筆致で爽快なラブコメに仕上げているのがこの作品の凄いところ。そんな力技が今回も炸裂している。
やってくれた。周りからも、そして読者からも明るくてマジメないい子ちゃんとしか思われてない北村の悩みとガップリ四つ相撲。それでいて、まったりとしてしつこくないまごうことなきラブコメになっている。
ドロ臭く、みっともなく、でも明るく漢・北村の生きる道を描いており、この巻を読んで、やっと大河が北村を好きになったことを納得できたような気がする。これまでは、ただのいいやつだったからねー。
これで、大河・竜児に実乃梨、亜美、北村を加えたラブペンタゴンにもいっそう深みが出てきそうだ。