秋月大河『騎條エリと緋色の迷宮 英国亭幻想事件ファイル』電撃文庫

[rakuten:book:12876556:detail]
突然、連続殺人事件に巻き込まれた瀬名皐月は、事件の渦中で騎條エリと名乗る美少女と出会う。エリは、《EVE》と呼ばれる謎の存在を研究しており、殺人事件の裏にも、人間に寄生し変質させる《EVE》の力があるのだと言う。


中世から続く組織とか、さらにその中で派閥争いがあるとか《EVE》を巡るやたらと壮大な陰謀にゾクゾクした。伝奇モノは風呂敷を広げれば広げるほど好き。能力を手に入れる引き換えに、一歩間違えると怪物になってしまうなんてところもツボ。
サブタイトルに事件ファイルとあるように、ミステリの要素を持った作品なのだけど、精緻な推理を求めると裏切られるだろう。この本のモチーフとなっているのは、ミステリはミステリでも新本格などではなく、古き良き「シャーロック・ホームズ」モノ。
ヒロインの騎條エリは、「そこまで分かるわけないだろ!」といいたくなる超推理を披露するところから、意外と武闘派でハードなアクションもこなすところまでホームズを踏襲。こうしてみると、ホームズにライトノベルはマッチする。本家も怪しげな東洋武術「バリツ」の達人だし、薬物中毒なんておちゃめな一面もあったりするし。
心情描写がいまいちしっくりこなかったり、物語の流れがどうもギクシャクしているように感じる部分もあったけど、とにかく伝奇設定が好みだったのであまり気にせず読めた。続編があるならば、《クラブ》関係をもっと深く描いたお話も読んでみたい。