小林泰三『天体の回転について』ハヤカワSFシリーズ

天体の回転について (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

天体の回転について (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

星を見るうちに、誰もが忌み嫌う“科学”に興味を持った少年が、天に向かって伸びる“天橋立”へと向かう(「天体の回転について」)。マッドサイエンティストたちを隔離するために作られた星“クルーイーニャ”。この星で作られたロボットたちは人間を越える知性を持っていた(「灰色の車輪」)。「SFマガジン」などに掲載された短編8編を収録したSF作品集。


小林泰三は、SF・ミステリ・ホラーと様々なジャンルで活躍しています。とはいっても、どのジャンルの作品も小林泰三臭が漂う奇妙なものばかりなので、分けてもたいした意味はないような気もする。クトゥルフもののハードSFとか、量子力学ホラーとか、鬼が探偵役のミステリとか…。
あと、泰三は、「たいぞう」じゃなくて「やすみ」。読みだけみると、ちょっとかわいいですね。変換するときは「たいぞう」と打つと便利ですね。
作風の特徴は、奇抜すぎる設定と丁寧で読みやすい文体。ほとんど説明もないままに奇妙な出来事が淡々と語られ、何じゃこりゃ?と思いながら読み進めると、だんだん世界の真の姿が見えてくる。パロディも多く、想像を絶するバカげたオチにたどり着いたりすることも。
「ハヤカワSFシリーズ」では、『海を見る人』に続いて2冊目の作品ですね。SFをファンタジーの手法で描くというテーマでまとめられていた『海を見る人』に比べると、作品集としてのまとまりはありませんが、その分バラエティが豊富。物理学をテーマに取り入れたハードSFから、シュールなギャグ、かつて角川ホラー文庫に書いていた頃を思わせるグロ描写まで小林泰三を知るにはいい内容だと思います。