虚淵玄『白貌の伝道師』ニトロプラス

白貌の伝道師

白貌の伝道師

“根無し草”のエルフ・ラゼィルが、野盗に襲われ心を殺し尽くされたハーフエルフの娘・アルシアと出合ったとき、惨劇の幕が上がる。エルフでありながら残虐非道なる行為を繰り返すラゼィル。彼のの巻き起こす殺戮は、エルフの里と人族の軍勢を飲み込み全てを混沌に突き落としていく。


ニトロプラス虚淵玄によるダーク・ファンタジー。一般書店向けではなく、コミケや同人ショップなどで販売された同人流通の書籍。現在は、アマゾンやニトロプラスの通販で入手可能です。
陰謀、殺戮、絶望といった黒い言葉がよく似合う血生臭い小説。『指輪物語』のような本格ファンタジー世界で、卑劣な陰謀劇と陰惨な戦闘が繰り広げられる。バトルシーンは武侠小説風で、ハデハデしくもスピーディ。人体がばっさばっさと切り刻まれ、ときには巨大な鉈で肉塊にされたりします。
物語は最後までダークかつハードに進み、それにふさわしい容赦の無いエンディングを迎えます。あまりにもヒドすぎて、むしろハッピーエンドにも見えてくる不思議な終わり方でした。
ただ、虚淵玄がシナリオを書いたPCゲーム――『ファントム』『ヴェドゴニア』『鬼哭街』『沙耶の唄』などと比べると、やや重厚さが不足気味。一冊完結でボリュームが少なく、物理的にも軽いからかもしれない。面白くなりそうなところで、あっさりと読み終わってしまい、もっと苦悩を! もっと血しぶきを! と吸血鬼じみた欲求不満を感じてしまいました。