支倉凍砂『狼と香辛料 8 対立の町 上』電撃文庫

女商人エーブと「狼の足の骨」を追って港町ケルーベへとたどり着いたロレンスたち一行。エーブから情報を引き出し、教会が狙っているという「骨」について探り始めたロレンスたちは、いつのまにか町全体を揺るがす陰謀に巻き込まれていく。


銅貨の謎は、ラノベ365日さんの推理そのままでしたね。文字だけではいまいち理解しにくいので、ピンとこなかった方はリンク先へ。
5巻から出ずっぱりのエーブが、いい味を出してました。いつ裏切られるかわからない剣呑さと、ときおり見せるやわらか態度。信頼できる相手を得られなかった一匹狼という感じ。ホロとエーブの相性の悪さは、やはり縄張り意識によるものなんだろうか。
新しく登場した商業組合のキーマンも、いかにも信用ならないキャラクター。エーブのキーマン、大商人らしい狡猾さを持つふたりとロレンスの情報戦――スパイスの効いた商人同士の駆け引きがこの巻の見所でしょう。
ホロとロレンスのやりとりも、間にコル少年が入ることでテンポがよくなっているように感じました。
今回は、上下巻構成の上巻。さらに言えば、5巻から連続したお話。これまでの『狼と香辛料』シリーズは、一冊ごとで贅沢に経済ネタとキャラクター盛り込み、起承転結をきっちり付けていくのが特徴だったので、やはり密度が薄くなってしまった部分はあります。経済話も、ミステリと言うよりは力押しな話が増えてますし。
しかし、エーブのようなホロのライバルになりうるキャラクターが登場したのは、一話完結をとりやめて大河ドラマに移行したおかげでしょう。メインキャラが増えて、人間関係はより緊密に描かれるようになりました。
とりあえず、早めに下巻が出ることを期待したい。

『狼と香辛料 8』感想リンクreclips