次巻で完結って嘘でしょ!? 『龍盤七朝 DRAGONBUSTER01』

龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)

龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)

秋山瑞人『龍盤七朝 DRAGONBUSTER01』電撃文庫
幼い頃、名も知らない老婆から双剣の術を仕込まれた被差別民族の少年・涼孤(ジャンゴ)。第十八皇女という窮屈なばかりで表舞台に出ることはない立場にフラストレーションをためる月華(ベルカ)。春秋戦国時代を思わせる架空世界で、少年と少女が出会う。古橋秀之とのシェアワールド企画、「龍盤七朝」の第一弾。


その寡作さと完結しないシリーズの多さ*1で、ラノベ読みから愛されたり憎まれたりしている秋山瑞人の新作。そう、「あの」秋山瑞人の新作が出版されたのです。この椿事に一部からは、『H×H』の連載再開なみの大事件だという声もあがっています(主に僕から)。とにかく、内容のスゴさは保障済みながら、ちゃんと続きが出るかどうか考えると背筋が凍りつくようなスリルを体感できる絶叫マシーン系のライトノベルなのです。恐ろしいことです。
しかも、同じくコアなファンの多い古橋秀之とのコラボレーションということでいやがうえにも期待が高まります。チャイナファンタジーで武術モノという設定からは、古橋による『IX(ノウェム) 』が連想されます。いや…うん、不吉な作品を持ち出して申し訳ありません。『DRAGONBUSTER』はちゃんと続編が出ますよね。伏線を張り巡らせたまま終わったりしないよね!
1巻の内容は、ボーイ・ミーツ・ガールのひとことに尽きる。武術がテーマなのにバトルシーンは冒頭の回想シーンのみで、あとは2人の主人公の日常生活が語られるだけなのだけど、ちょっと異常なほど惹き付けられるものがあります。通りがかった道端で演じられている京劇から茶屋の主人の薀蓄まで、いちいち作りこまれており、じっくりと読みふけってしまう。実際、たいした厚さでもないのに読了までかなりの時間がかかってしまいました。
キャラクターの造形も鮮やか。すさまじいクンフーがありながら差別されることに慣れきって卑屈に生きる涼孤と、高すぎるプライドとその域でない実力のバランスが取れず、ついつい奇行に走ってしまう月華。2人の弱さと強さが対比されるように描かれ、この2人が手を取り合ったらすんごいことが起こる!という空気が行間からビンビンに出まくってます。
大比武という真剣勝負の武道会、ライバルとして立ちふさがりそうな武人…などなど、散々におもしろくなりそうな予感を振りまいたところで1巻は終了。これは大長編になるな!と思いきや、あとがきに「次の巻でラストまで行くつもり」とのお言葉が。次で終わりって、まだ始まってもいないではないですか。あと、「デストロイです」とか言われると不安で眠れなくなりそうです。
涼孤と月華の物語が終わっても、龍盤七朝シリーズは続くようですが……この登場人物であと5冊ぐらい読んでみたかった。あと、古橋サイドの龍盤七朝も早く読ませていただきたい!

『龍盤七朝 DRAGONBUSTER01』感想リンクreclips

*1:といっても、決着がついてないのは『E.G.コンバット』と『ミナミノミナミノ』だけで、完結させる力がないというわけではない。とくに『猫の地球儀』のラストは特筆すべき美しさ。