トラウマはステータスだ!希少価値だ! 『烙印の紋章』

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・杉原友則『烙印の紋章 たそがれの星に竜は吠える』電撃文庫
家族、友人、故郷。十年戦争はオルバから全てを奪った。ある日、鉄仮面を付けられ剣奴隷として生きるオルバのもとに、一人の貴族が訪れる。彼は言う、お前はこれからメフィウス帝朝の皇子ギル・メフィウスとして生きるのだ、と。ここから、オルバの復讐と栄光に満ちた人生が始まる。竜が家畜として飼育され、エーテルで空を飛ぶ飛空艇がある世界を舞台としたファンタジー戦記もの。


主人公の不幸っぷりがすごい。
自国軍の略奪で村を焼かれ、からくも生き延びたものの家族友人はみんな死亡or行方不明。すさんだ生活の結果あえなく逮捕され、日々仲間達と殺しあう剣奴隷に。胸のうちは、戦争を起こした王侯貴族どもへの憎しみでもうぐちゃぐちゃ。
どん底状態をしっかり描いた上で、今度は奴隷から皇子(偽者だけど)へと大出世。悲惨な経験で培った暗い情念をパワーに変えて、大活躍を開始する。こんなドロドロしたやつが権力をもったらどうなるんだろう?と夢中にさせられた。
政略結婚の相手として登場するビリーナ王女は、王族としての誇りと飛空艇を乗り回すおてんばさを兼ね備えた人物。尊い血を受け継いだものの義務感と、血とドロ水をすすったものの暗い情念、ふたりの真逆の思想のぶつかり合いは今後もテーマとなって行きそう。竜使いのホゥ・ランや小悪魔系高慢妹イリーナなどサブヒロインも充実しているので、続きが出るなら読んでみたい。
主人公の最強っぷりがちょっと気になったけれど、トラウマをエネルギーに変えていく物語のダイナミックさが光った。

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