俺達の紅坂は(以下略 『紅 醜悪祭 下』

紅 醜悪祭 下 (集英社スーパーダッシュ文庫 か 9-7)

紅 醜悪祭 下 (集英社スーパーダッシュ文庫 か 9-7)

片山憲太郎『紅 醜悪祭 下』スーパーダッシュ文庫
クリスマスの夜、真九郎は星噛絶奈からの招待を受ける。悪宇商会主催の醜悪なる祭、キリングフロアが幕を開ける。

本編というか小説部分

事前に聞いてはいたものの、思った以上に唐突な終わり方で呆然としてしまった。絶奈とのリベンジマッチがはじまり、これから盛り上がるぞ!ってところでぶっつりと切れてしまった感じ。かなり猛烈な努力を重ねれば、「曖昧にぼかすことで余韻を残す終わり方だった」なんて風に考える日が来るのかもしれない。最後の一文から見るに、ある程度以上そういった効果を狙ってるのは確かだと思うんだけど、うーん。
とはいえ、ラスト直前まではけっこう楽しめた。呼吸をするように自然にピンチに陥っていく真九郎とか、絶体絶命のピンチで唐突に現れる紫とか。展開としてはどうしようもなく不自然なんだけど、変な説得力がある気がする。

その他(アニメ第1話シナリオ、紅用語辞典、他)

原作ファンが書いたアニメ『紅』の感想というのはあまり見たことがないのだけど、どのくらい見られてるんだろうか?
アニメ版は、基本的には1巻の内容をなぞりつつも、明らかに原作から逸脱した内容を多々含んでいるので、人によっては違和感を覚えるかもしれない。環さんが赤裸々に恋愛観を語り、さらには修羅場を演じてしまう7話なんかは、怒っちゃう人もいるんじゃないかと。
でも、プレスコ(アフレコの逆で音声を録ってから絵をつけていく)による芝居の細やかさや、動きのおもしろさなんかがものすごくて、個人的にはものすごく好きだったりする。とくに、真九郎や紫がミュージカルを演じる6話は神がかっていた。映像の強度がはんぱない。アニメとしてはもちろん、『サウンド・オブ・ミュージック』や『シカゴ』、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』、『ムーランルージュ』なんかのミュージカル映画の観点から見ても特筆すべき作品だと思う。ぜひ映画史の教科書に載せて欲しい(ミュージカル映画好きでアニメ好きで、かつ紅好きなので、だいぶ取り乱してます)。
そういうわけで、第1話シナリオにはちょっと興味があった。で、読んでみると、やっぱりなかなか面白い。たとえば、紫が初めて登場するシーンには以下のようなト書きが付けられている。

◇秋 九鳳院家 夜 庭
侘助の花びらが散ったその場所は、控えめに生きなくてはいけない紫の存在を表すよう。
うまく生きられない真九郎を不味くて吐くかのように、
紫「うぇ…不味い…」
『紅 醜悪祭 下』 p.126

このシナリオが収録で使われたものなのか、文庫用に書き直されたものなのかは不明ながら、かなり丁寧に原作を読み込んでから再構成してるんだなーと感じた。まあ、あたりまえかもしれませんが…。ちなみに「うぇ…不味い…」は、初めてスポーツドリンクを飲んだ感想です。
勝手な想像だけど、意識して原作を崩してるんだなと思った。つかず離れず、基本は抑えつつ原作への裏切りも辞さない。原作そのままにアニメ化して欲しい人からすると、余計にたち悪いでしょうけど。

ええと、用語集とQ&Aについてはとくに面白みを感じなかったので、流し読みというか、パラっとめくってそのまま飛ばしたです。
……なんかシナリオについてばっかりになってしまった。

『紅 醜悪祭 下』感想リンクreclips