ノベルゲームはエロゲワイド時代に生き残れるのか?

あちこちでエロゲのワイド化について語られているので、ちょっと乗っかってみよう。

エロゲーのワイド画面化について - Rewriteの16:9議論から(鍵っ子ブログ)
エロゲは16:9になってどう変わるのか(notable or ordinary)
エロゲがワイド画面対応できない理由?(Half Moon Diary)

Keyが次回作『Rewrite』で、ビスタサイズのワイド画面を採用するようです。ワイド液晶の普及の具合からして、いずれは他のメーカー・ブランドも追随していくことになるでしょう。
そーすると、なにが起こるのか? というのが今回のネタ。

■まず

まず、人間の視野はけっこう横長です。すくなくともスタンダードサイズの4:3よりは全然広い。これは、目が横に並んでるからですね。あと、まぶたの構造上、眼球の可動範囲も縦よりは横に広い。なので、アニメやエロゲといった映像コンテンツがワイド化していくのは自然な流れでしょう。より、人間の目で見た絵に近づくわけですから。
ただし、ノベルなどのテキスト主体のゲームだと、また話は別なんじゃないだろうか? 文章の読みやすさという面から見ると、ワイド画面はちょっとした問題を抱えてるんじゃないだろうか?

■いくら

いくら視野が広いと言っても、「注意して見る」ことができる範囲はそんなに広くない。カメラのレンズで言うと、通常の視野角はおよそ50mm相当、注視した状態では100mm相当なんて話も聞いたことがあります。ええと、ソースは出せないので曖昧ですが、感覚的にもそんなもんじゃないでしょうか? つまり、目には広い範囲が写っていても、注意深く観察できるのはその一部だけ、ということになります。「東方」ルナティック余裕です! とか、そういう人なら画面全体にフォーカスを合わせることも可能なのかもしれないけど、ここでは除外。

■こういった

こういった人間の目の特性がエロゲにどう関係するかと言うと……そう、テキストです。テキストを読むときは、文章の頭からお尻まで順番に視点の位置を移動させて行くことになります。

いままでの4:3画面だと、こんな感じ。以下、青い矢印は視線の移動ルートです。画像が適当なのは気にしないでください。

この画面構成を、単純にそのまま16:9のワイド画面にすると……

これは、たぶん読めない。すごく疲れると思う。

狭義のノベルだけでなく、メッセージウィンドウを使うADVタイプのゲームでも状況は同じでしょう。

やっぱ、さすがに無理がある。

まず、視点の移動距離が長くなるので、単純に目が疲れます。とくに、行の末尾から次の行の頭に視点を飛ばすときがヤバイ。
また、1行の文字数が増えるため内容が頭に入りにくくなるでしょう。改行も句読点と同じく文章のテンポを制御するものなので、ムダに長くなると読みにくいわけです。
PC書籍などの横書きの本を思い浮かべてもらうと、分かりやすいかもしれません。書籍でも雑誌でも、紙は基本的に縦長。A4以上の大きさに1段組で文字を詰めてあるとかなり読みにくいと思う。あ、ブログの横幅のほうが直感的か。モニターの横幅いっぱいに文字が並んでたら嫌ですよね?

■でも

でも、画面の横幅いっぱいにテキストを表示しなきゃいけないなんて決まりはないわけで、上の例のような露骨に読みにくいシステムが採用されることはないでしょう。
じゃあ、どうしたらいいだろう?


こうですか? わかりません><

横幅いっぱいに文字が並んでるよりはだいぶマシですが、これでもやっぱり不自然な気がします。CGを見るときと文章を読むときで目の動かし方が違うので、これはこれで疲れるんじゃなかろうか? テキストを読んでると絵の両サイドが意識の外に追い出されてしまい、逆に画面全体を見ようとすると文章が読めない。

■それでは

それでは、ワイド画面に向いた画面構成というのはどういうものだろう? と考えていくと、やはりワイドスクリーンの大先輩である映画が思い浮かびます。洋画の字幕のようなスタイルなら、ワイド画面とも相性がいいはず。
映画の字幕とADVのメッセージウィンドウとの違いを見てみましょう。まず、いわずもがな「ウィンドウ枠」がない。そして、もっと重要なのが「一回に表示する文字数が少ない」。字幕翻訳の世界では、正確さよりも短さを優先し、なるべく一回で表示する文字数を減らすことが基本になっています。Wikipediaさんによると、「一度に表示される字幕は20文字までが基本」だそうです。長すぎたら、字幕を読むのに追われて映像を見てるヒマがなくなってしまうので、当然のことですね。

この程度の長さなら、画面全体を眺めながらでも、無理なく頭に入ってくるでしょう。
で、これをエロゲでやろうとしたら……たぶん、すごく絵の枚数が増えちゃうんじゃないだろうか。テキストを切り詰めたら、その分をCGと音声で表現しなければならないわけで、プレイ時間当たりの製作コストはかなり跳ね上がる。でも、それでもこんな感じの「映画的な演出」を取り入れてくるメーカーはありそうな気がする。
個人的には、従来のテキスト主体なノベル・ADVのスタイルに強い愛着があるので、こういった変化はあまり望ましくないんですが、ここ数年のエロゲの流れから見ると「映画化?」もありえなくはないかなー、などと思ったりしてるわけです。
といっても、エロゲは昔からレガシーが強くて640*480から800*600に移行したのもほんの数年前なので、変化にはまだ時間がかかるんじゃないかなーとも思います。

以上、長々と書いてきましたが、もちろんのこと、スムーズにワイド化が進んでいく可能性もあります。プレイヤー側の慣れで解決する問題なのかもしれないし、ちょっとした工夫で従来のスタイルを崩さずにワイド画面に対応できるのかもしれない。そんな期待も込めつつ、『Rewrite』の完成を震えて待ちたい。