歴史の二重螺旋『境界線上のホライゾンI 上・下』

川上稔境界線上のホライゾンI 上・下』電撃文庫
なにを書いてもネタバレになりそうな、でも、どれだけ書いても基本設定を説明することすら無理そうな、そんな本。とにかく溢れんばかりの設定と膨大な量のキャラクターを詰め込んだ極太な第一巻だった。いや、溢れんばかりというのは正しくないな。だいぶ溢れまくった結果、冒頭に用語集やキャラクター表がついてて、わけが分からなくなったら調べてくださいという親切仕様に。
というわけで……
遥かな未来、人の生存圏は極東の某島国のみとなっていた。没落した人類は、かつての栄光を取り戻すために、これまでの歴史を再現しようとする。かくて小さな島国で、スペインの無敵艦隊やらオスマントルコやらのヨーロッパ中世の歴史と、日本の戦国時代が二重写しで展開されることになる。そんな中、葵トーリたち都市艦「武蔵」の生徒たちは、世界列強の英雄達と相対していくことになる。一人の少女の命と世界の運命をかけて。
というのが、基本的な設定。たぶん。
もう川上稔世界観の集大成といった感じで、定めをなぞりながら自由を求めるという部分は『閉鎖都市 巴里』を思わせ、各国を巡り英雄を打ち破っていくというとこは『終わりのクロニクル』っぽい。すべての川上作品を読んでいるわけではないけれど、世界設定の骨太さではこれまででも最高じゃないだろうか。ついでに、まだ冒頭だけど長さでも『終クロ』を超えてきそう。
そうそう、戦闘描写も進化をとげていて、スピード感にあふれ、駆け引きもかなりアツイ。本田二代VS立花宗茂とか、チート級な人外バトルは迫力バッチリ。これまでの作品では、特異な世界を作り上げているわりに最後には力押しになってしまうとこがあって、ちょいと不満だったので、続刊への期待も高まるってもの。
キャラのアクの強さでは、佐山&新庄に勝てないかなーとも感じるけれど、まだ1巻だから仕方がないかな。それに、サブキャラの活きのよさに関しては『終クロ』以上!

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