普通の人たちの普通じゃない戦い『迷宮街クロニクル1』

林亮介迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル?』GA文庫

迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル? (GA文庫)

迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル? (GA文庫)

ある日、京都府に怪物どもが跳梁跋扈する地下迷宮が出現した。モンスターたちの死骸からは貴重な成分が検出され、迷宮に潜って狩りをする「探索者」たちが組織される。日本で一番死に近い場所、京都府迷宮街でサバイバルする若者たちの生と死と青春。

早く続きが読みたい! 面白いラノベは数あれど、こんなに続きが気になってしかたない作品はひさしぶり。『和風Wizardry純情派』というタイトルでWEBに発表されていたものに加筆したものということで、やはりWizardryシリーズの影響が色濃い。
といっても、ゲームっぽいというのとはちょっと違う。
Wizardryというやつは、真っ黒い画面に白い線を引いただけの迷宮を、文字と数字のみでグラフィック一切なしのキャラクターで探検するというハードコアなゲームだ。さらに、どんなにレベルが高いキャラでもクリティカルヒットを食らうと一撃で死んでしまい、生き返りの魔法に失敗するとキャラクターが消えて永久に失われてしまう。
この『迷宮クロニクル』は、そんなWiz独特の殺伐とした空気を本のかたちに閉じ込め、読者に追体験させる。主人公にあたる真壁は、恋人との関係のもつれかはたまた一時の気の迷いか、大学を辞めこの死地を訪れてしまう。他の登場人物も、借金に追われた元バンドマンだとか、元会社員だとか日本のどこにでもいそうなやつらばっかりなのも、逆に緊張感を高めてくれる。最初はほんとに普通っぽかった人たちが異常な舞台に立たされ、だんだんと優秀な戦士になっていくというのが、おもしろさのポイントだろうか。
作中にたびたび挿入される真壁のブログがまた、文章は朴訥として平和な感じなんだけど、内容は怪物を殺しただの同期のグループが全滅しただのとハードボイルドでギャップがすごい。
同じくWizをテーマとした『隣り合わせの灰と青春』とも近いものがあるので、そちらが好きだった人はぜひ。WEB小説版は完結していたようだし、早急に続きを出して欲しい。待ちきれないですよ!

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