Black Cyc『MinDeaD BlooD』感想

オリジナル版ではなく、昨年発売された「DVD Special Edition」でのプレイ。CD版との差異は、男性キャラに声が付きフルボイスになったこと、テーマ曲が追加されたこと、それにディスクレスで遊べるようになったこと。
難易度が高いことでも有名なゲームなので、早々に攻略サイトに頼ることにしました。BADENDを繰り返しながら、自力で攻略すれば、また違った感想も出てくるのではないかと。
また、CG・イベントはコンプしていません。メインのシナリオをクリアしても、CG回収率はわずか60%程度。その後、攻略サイトとにらめっこしながらある程度は見ましたが…グロシチュを集めるために作業を続けるのが辛くなり、適当なところでプレイ終了。このゲームを真に楽しむためには鬼畜力が足りなかったのかも。
楽しみつくしたとはいえないので、今回はネタバレなしで簡単に。

■ストーリー
ミイラとなり地下室に置かれていた主人公・七瀬しずるは、吸血鬼の姉妹・麻由と麻奈のいたずらよって復活する。人間であった頃の記憶を失い、強靭な肉体と精神を手に入れたしずるは、吸血鬼の力を振るい、街を支配しようと思い立つ。
同じ頃、吸血鬼ハンター・榊悠香が街を訪れる。彼女は、家族を幸せを全てを奪い去った吸血鬼を憎み、復讐のために、ある吸血鬼を探していた。
吸血鬼と吸血鬼ハンターのバトルを軸に、物語は展開していく。

■感想
エログロなエロシーンと重厚で感動的なシナリオの両立がこの作品のウリ。
メインとなるストーリーは、わりと王道な伝奇モノで、鬼畜度・グロ度はさほど高くありません。吸血鬼としてのパワーに酔いしれ街を支配していく、という展開よりも、人の血を吸うことに疑問を抱き、生き方を模索するといった展開が基本。
といっても、街を完全に支配し、ハーレムを築くなんてエンドも用意されています。さらにやりこんでいくと、レイプ、ドラッグ、拷問、処刑、となかなかハッピーな感じなシーンが山のように。ただし、ハード系のシーンは、主人公以外の手によるものが多いので、ntrはダメ! ゼッタイ! という方は避けたほうがいいかもしれません。
敵として登場する吸血鬼ハンター・榊悠香も魅力的に描かれていました。過酷な運命に苦しみ、悩み、迷いつつ戦い続ける。彼女の登場するシーンはどれも緊張感が漂っており、ダークな雰囲気を盛り上げてくれます。脇役ですが、バンドメンバーやファンたちの性欲の吐け口とされながら歌い続ける歌姫・江梨衣のストーリーもエロ哀しくて素敵。

Tarte『カタハネ』感想※ややネタバレ

アインはトニーノに演じてほしかった。作中では三枚目な役どころだけど、本当のトニーノはきっとアインのような強さと優しさを秘めているから…などと、意味不明なうわごとを言い出したらカタハネ中毒です。そっとしておきましょう。そもそも「本当のトニーノ」ってなんだよ。
というわけで、致命的なネタバレは避けたつもりですが、そこそこネタバレです。というよりも、やってないと分けがわからないんじゃないかと。

■ストーリー
大逆人アインは、実は「いい人」だった。小説家志望のワカバは、そんな思い付きから演劇を作ろうと思い立つ。そんな折り、幼なじみの少年セロは、その家族ともいえる人形(シスター)ココのメンテナンスのため旅をすることになる。ワカバとその弟のライトも旅行に同行することになり…。国中をまわりながら劇を作り上げようとする少年と少女、男と女、そして人形たちの物語。「シロハネ」
白の国最後の王女クリスティナ、後世には大逆人として伝わるアイン、赤の国の至宝とも呼ばれる人形エファ、青の国からやってきた策士ヴァレリー。白青赤、3国の権勢をめぐる陰謀に翻弄された人々の生と死を描く悲しいお話。「クロハネ」
プレイヤーは、「シロハネ」→「クロハネ」→「シロハネ」と3章仕立ての物語を読み進めていくことになる。そして、物語を3周したとき、すべての謎が明かされ、しっとりとした余韻を残しつつ大円団を迎える。

■アンドロイドは王女の夢見るか?
実際に夢を見るのはワカバとライトなのだけど、そのへんはスルーしてください。
陰謀に翻弄され、破滅することが分かっていながら愛を深めていくクリスティナとエファ。「クロハネ」の悲恋と二重写しになるように惹かれあっていくアンジェリナとベル。この百合の二重奏は、『カタハネ』のメインディッシュのひとつ。エロシーンも、お互いへの深い愛情を感じさせる美しいものでした。エロさより、もの哀しさを感じてしまうほどに。
年老いることのない人形と恋愛をすることができるのか? 人形石の力で記憶や意思までも変わってしまう人形にとってアイデンティティとか何か? なんていう重いテーマも出てきますが、それほど深刻にならずうまく処理しています。これは、キャラクターのもつ力でしょう。ベルがエファの魂を、そしてクリスティナのそれを受け入れるのは当たり前のこと。だってベルだから。
クリスティナとエファの恋は、お互いに依存し合い甘い毒の中で奈落へと落ち込んでいくものだった。そして時はながれて「シロハネ」へ。人形とヒトとの自然な関係、対等な恋はアンジェリナとベルによって成し遂げられる。

■ボーイ・ミーツ・ガール
ワカバとセロの恋の物語は、なかなか進展しない。まるでマージャンに入った福本伸行マンガのごとく。王宮にノゾキに行くシーン、キスされておいてそのまま何ごともなかったようにスルーって何よ! とか思っていると、いつのまにか、その「じれったさ」が癖になっているのがセロマジック。実際、思いが通じ合ってエロシーンになだれ込んだときには、残念さすら感じました。
明確な主人公を定めない群像劇というスタイルをとっているため、プレイヤーには、セロの想いも、ワカバの想いも見えている。これにより、そのすれ違いや煮え切らなさがより強調される。視点がコロコロ変わっていくため、感情移入は難しいけれど、その代わりに父親というか、仲のよい友人というか、そんな近しい第三者的な立場から、2人の恋を見守っている、そんな気分に浸らせてくれる。

■英雄と悪漢
そして、最後のシナリオとなるココルートでは、張り巡らされた伏線を駆け抜けるように、たたみ掛けるように回収していく。お祈りのポーズをとるココの両手のように、過去と現在が繋がっていく。そこに浮かび上がってくるのは、大逆人の汚名のもと、嫌悪され続けてきたひとりの男の後ろ姿。
ココからデュアへ、デュアからエファへと託された人形石は、ベルを通じてココのもとに戻ってくる。それはなんの解決にもなっていないただのパス回しに過ぎないはず。「歴史は変えられない」というセロの台詞のとおり、すべてはとっくの昔に終わってしまったことなのだから。
だけど、劇中劇の最後で『カタハネ』というタイトルに込められた意味を知ると、最後にはクリスティナもエファも、アインも幸せだった、悲しむべきことなんかなにもない、そんなふうに思ってしまった。
「シロハネ」と「クロハネ」が繋がっていくのと並走するように、「シロハネ」の各登場人物たちもそれぞれの思いを伝え、結びつき合っていく。そして、未来へと歩き出していく。


セーブデータによると、プレイ開始からコンプリートまで約4週間かかっています。短くはないとはいえ、そう長いゲームではなく、総プレイ時間は30時間に満たないでしょう。にもかかわらず、長い期間がかかってしまったのは、途中で他のゲームに浮気したりしていた証拠。寝食を忘れて熱中したとはいえません。正直、1周目では何度か挫折しかけました。
しかし、「ココルート」を終えると、すぐに再プレイに入ってしまいました。そのくらい、エンディングの余韻が気持ちよかった。
もし、途中で止めている方がいたら、最後までプレイしてみることをオススメします。

エロゲーのボリュームの話など

それほど、ここ10年前後ボリュームが変わってないのにもかかわらずボリュームが多いと感じる二つの理由
関連:テキスト量に関する記事のまとめ@かちぼし

・メガヒットする一部の作品がボリューム豊富。
・最近のエロゲは全般的に攻略できるヒロインの数が少ない。

僕の愛する伝奇モノ、バトルモノを中心に見ていくと、うなずける部分が多い。特に後者。攻略ルートが減り、そのかわりワンプレイの比重が大きくなって来た、というところ。
2000年ぐらいまで、ストーリー中心のゲームの多くは、『痕』が生み出した、「小さな物語をパズルのように組み合わせてひとつの作品を作り上げる」という手法を採用していました。
この傾向に変化が出てきたのは、Nitro+のデビュー作『Phantom - PHANTOM OF INFERNO -』からじゃないかと思う。当時、そのワンプレイの長さと密度の濃さは衝撃的だった。各ルートそれぞれで異なった展開を繰り広げ、ドラマを完結させる。まるで、1本のゲームに複数の小説を詰め込むように。
このスタイルをさらに推し進めたのが、『月姫』と『Fate/stay night』でしょう。
自分がこれまでプレイしてきたゲームで考えると、個別のルートが長大化してきた、というのは実感としてあるなぁ。今『痕』をプレイすると、1ルートが短くて物足りなさを感じたるするのだろうか。
全体のボリュームの変化については、正直よくわかりません。昔から大作はあったし、難易度の高さもあって実プレイ時間はけっこう長かったような。

ホームベース気味だっていいじゃない
エロゲンガーは本当に絵が下手なのか?」について、みやま零からつっこみをいただいてしまった。現場からの意見は、説得力がありすぎて困りますね。
(このリンクを発見したときは、ものすごい勢いで取り乱してしまった。更新用のテキストファイルに意味不明な文面が残ってる。あのままアップしないでよかった…。)

エロゲー「ライター買い」の傾向と対策

以前にも紹介しましたが、「シナリオライター世代別区分け」には、有名どころのエロゲーシナリオライターが年代別にまとめられています。それで、作品をプレイしたことのあるライターと、やったことがないor知らないライターに分けていくと、その人の好みとか性癖とか変態性とかが見えてくるんじゃないかと思い、試してみました。長いので注意。

====================
追記:
以下のリストは、作品の評価に関係なく、自分がプレイしたゲームを列挙したものです。各ライターの代表作をまとめたものではありません。特に、灰色の文字で書かれたコメントはかなり偏向してます。
プレイ遍歴を見つめなおすことによって、プレイヤーの趣味嗜好・またゲームに熱中していた年代などが浮かび上がってくる、という企画。タイトルの「傾向と対策」というのも、プレイヤーの「傾向」とソレに対する対策という意味です。まぁ、変態につける薬はないので、「対策」はありませんけどね!
====================

【Suppeのエロゲー・カルテ】
ライター:プレイ済みのゲーム

■〜1996
蛭田昌人:『同級生2』『遺作』
剣乃ゆきひろ:『EVE burst error』『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』『十次元立方体 サイファー〜蒼き月の水底〜』
最新作の『サイファー』も強烈なアンチミステリに仕上がっており、底力を見せ付けてくれました。
TADA:WIN以降の『ランス』全般(『5D』以外全部かな?)。
とり:『AmbivalenZ』『闘神都市2』『デアボリカ』『ママトト』『大悪司
イマーム:『あゆみちゃん物語』『Only You』『ぷろすちゅ★でんとGood』『ウルトラ魔法少女まなな
アリスソフトのクリエイターは固体識別が難しい。でも、こーしてみると、それぞれ個性がありますね。特に印象に残っているのは、言わすと知れた『ランス』シリーズ、それに『デアボリカ』。
広崎悠意:『虜』『海からくるもの』
今に至るまで、『虜』を超えるSMゲーム、調教ゲームは出ていないと思う。
大槻涼樹:『終末の過ごし方』『黒の断章』
『終末』は雰囲気ゲーの超良作。短いけど。

■1996〜2000
高橋龍也:『雫』〜『リアライズ』まではほぼ全部。
『痕』は、今に至るまでのエロゲーの歴史を決定付けた名作。『リアライズ』はネット社会をモチーフとした切れるような鋭さを持った作品で、プレイして打ちのめされました。…でも、ちょっと作りこみが甘いのは確か。
涼元悠一:『AIR』『CLANNAD
SFファン的に、『CLANNAD』のことみシナリオで超ひも理論が出てきたときには燃えました。
久弥直樹:『ONE』『KANON
「好物」という属性の功罪。
麻枝准:『MOON.』〜『CLANNAD』まではすべて。『リトバス』は未プレイ。
一番好きなのは『MOON.』かもしれない。
原田宇陀児:『WHITE ALBUM
元長柾木:『フロレアール』『sense off』『未来にキスを
私的エロゲーベスト10を作ったら『フロレアール』は、入りそう。
ふみゃ:『アトラク=ナクア
都築真紀:『とらいあんぐるハート』シリーズ全般。
菅宗光:『恋姫』『BE-YOND』『うたわれるもの
オバカな前半から壮大な世界感を感じさせるラストへのつなぎが見事。
丸谷秀人:『MAID iN HEAVEN』『ゆのはな
ゆのはな』は、J・さいろーのイメージが強すぎる…。
山田一田中ロミオ:『加奈 〜いもうと〜』『家族計画』『星空☆ぷらねっと』『CROSS†CHANNEL』『神樹の館』『最果てのイマ
特に好きなのは『加奈 〜いもうと〜』と『最果てのイマ』。偏ってるなあ。
SCA-自:『終ノ空』『二重影
突然ヴィトゲンシュタインとか言い出しちゃうトンガリ具合が最高。

■2000〜2003
荒川工:『Lien』『ぼくらがここにいるふしぎ。』『あやかしびと
虚淵玄:メインの作品はたぶん全部。ただし『続・殺戮のジャンゴ』は積み中。
『Phantom』のクロウディアお姉さまが好きでたまらない。…同じ意見の人には会ったことがない。
星空めてお:『腐り姫
奈須きのこ:『月姫』『Fate/stay night』『Fate/hollow ataraxia』『MELTY BLOOD
丸戸史明:『ショコラ』『パルフェ
エロシーンへの「入り方」が好き。「そして僕たちはどちらからともなくお互いを求め合っていた」っていうのをリアルタイムで見せる技術はすごい。こんにゃくやりたいなぁ。
竹井10日:『秋桜の空に
鬼畜人タムー(タシロハヤト):『螺旋回廊』『化石の歌』『君が望む永遠』『螺旋回廊2』
化石の歌』は、SFとファンタジーを混合した珠玉の作品。あまり語られないけれどオススメ。
トノイケダイスケ未プレイ!
ヤマグチノボル:『カナリア
桑島由一:同上
神様家族』『ゼロの使い魔』などラノベのほうは押さえてます。
王雀孫未プレイ!
片岡とも:『銀色』『narcissu
朱門優未プレイ!
早狩武志未プレイ!
水無神知宏未プレイ!
北側寒囲:『すめらぎの巫女たち』
J・さいろー:『ローデビル!』『塔ノ沢魔術研究会』『ゆのはな
変態エロの神。
御影:『水夏
柊♪たくみ同人作品のみ。
Kanoso』シリーズには夢中になりました。
秋史恭未プレイ!
藤崎竜太未プレイ!
橘ぱん未プレイ!
三宅章介:『こみっくパーティー
天野佑一未プレイ!
foca未プレイ!
連悠太未プレイ!
椎原旬:『まじかる☆アンティーク』『独占』

■2003〜
瀬戸口廉也:『CARNIVAL』『SWAN SONG
今最も注目しているライター。次回作『キラ☆キラ』はひさびさに発売日買いしそう。
健速同人作品のみ。
るーすぼーい:『車輪の国、向日葵の少女
タカヒロ:『つよきす
東出祐一郎:『あやかしびと
鋼屋ジン:『斬魔大聖デモンベイン
正田崇未プレイ!
桜井光未プレイ!
木之本みけ未プレイ!
七烏未奏未プレイ!
神堂劾未プレイ!

2000年〜「未プレイ」が増えるという歳がバレる結果となりました。あとは、しいていえば、伝奇など殺伐とした作品を好んでいるようです。恋愛モノ、学園モノには抜けが多い。

コットンソフト『レコンキスタ』感想※ややネタバレ

2006年、多くのファンに惜しまれつつ解散したねこねこソフト。そのスタッフが立ち上げたコットンソフトの第2弾。

■ストーリー
舞台は埋め立てで作られた人工島、海上ニュータウン。政府の一大プロジェクトとして建設されたこの島は、工事中に事故が相次いだことから計画が停滞し、いまや寂れ果てていた。深夜に現れるという「首狩り女」の噂を巡り、物語は展開していく。

■感想
モデルとなったのは神戸ポートアイランドあたりでしょうか? のっぺりした埋め立て地に延々と倉庫街が続き、なんだか非常に不安になる土地。人工島と都市伝説という現代的な要素が、キリシタン村の古い因習といういかにも伝奇モノっぽい要素につながっていくのは新鮮でした。
しかし、正直に言って、あまり楽しめませんでした。
主人公が複数おり、しかも1〜3章すべてで主人公が交代すること。それに、悪役を中心として物語が進行するため、ともすれば主人公・ヒロインが傍観者になってしまうこと。これらによって、いまいち感情移入できなかったのが大きい。
また、要素を詰め込みすぎたせいか、個々のテーマが伝わりにくくなっているようにも感じました。
都市伝説、ゾンビ、キリシタン、輪廻転生、霊魂の存在、猟奇殺人…
とくに、主人公のひとり「槙野慶吾」の心の闇については、もう少し掘り下げて表現して欲しかった。暮葉ルートの終盤は、このゲームでももっとも興味深い部分のひとつだと思うのですが、このような重いテーマを扱うには短すぎでしょう。
犯人や「首狩り女」の正体などの大きな謎が、一周目であらかた見えてしまうのも残念なところ。二週目以降は、ホラー・サスペンス的な要素がほぼ死んでいました。
不満ばかりになっちゃいましたが、テキスト、システム、グラフィックなどは、手抜きなく仕上げられており、完成度そのものの高さは確かです。
また、いまどきシナリオ中心の本格的な伝奇モノを作ってくれる会社は貴重な存在。全力で面白いものをつくろうという姿勢は感じたので、次回作以降もチェックしておきたいところ。