邪馬台国は空にあった?『ハルカ 天空の邪馬台国』

ハルカ 天空の邪馬台国

ハルカ 天空の邪馬台国

桝田省治『ハルカ 天空の邪馬台国エンターブレイン
邪馬台国を舞台にした超古代冒険小説。台湾からの帰化三世で高校生の張政は、ある日、3世紀の日本へと召喚されてしまう。そこで待っていたのは、貧乳でちょっとエロい巫女のハルカと天空の浮島「邪馬台国」、そして血みどろの戦争だった。

ゲームデザイナー・脚本家の桝田省治が、幻に終わった枡田版『天外魔境III NAMIDA』を小説化したもの。『天外魔境III NAMIDA』は、10年近い延期のすえ2005年に発売されているが、設定・シナリオなどは全面差し替えとなっており、この『ハルカ』はあくまで桝田省治が書いたオリジナルバージョンのノベライズということのようだ。『天外魔境』シリーズはプレイしたことがないので、ゲーム作品との関連がどの程度あるのかはよくわからない。
桝田省治は、『リンダ・キューブ』『俺の屍を越えてゆけ』などでもゲームデザイン・シナリオを務めており、個人的には『俺屍』の人というイメージ。RPGなのに、プレイヤーキャラがどんどん寿命で死んで代替わりしていくというのはインパクトが強かった。
で、小説以外のジャンルで活躍してきた人だからか文章はじゃっかん硬く、描写で遊んだりはあまりしない。ただし、簡潔で分かりやすいのでさくさく進めることができ、530ページとかなりの量なのに、厚めの文庫本とそう変わらない時間で読了できた。このあたりは、富野由悠季監督の小説とも近いかも。全体的にエログロ成分が強めなのも富野小説っぽいか。
全体的にちょっと駆け足で、ちょっと描写がもの足りない部分もあった。けれど、どんどん壮大になっていく物語には引き込まれるものがある。ダイジェストっぽいぶん、展開が早くて飽きがこない。
続編の『ハルカ 炎天の邪馬台国』も用意してあるので、続けて読んでしまう予定。

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家族型決戦兵器登場『バカとテストと召喚獣5』

井上堅二バカとテストと召喚獣5』ファミ通文庫

バカとテストと召喚獣5 (ファミ通文庫)

バカとテストと召喚獣5 (ファミ通文庫)

そんなわけで、最終兵器「明久の姉」が登場。またひとり、アキちゃんラブラブ陣営に有力な新人が入隊することに。明久は、姉の魔手から逃れるために期末試験で結果を出さなくてはいけないことになり、なんとテスト勉強をすることになる。あと、さらっと登場した「雄二の母」もインパクト大。
姫路さん&美波のアタックもいよいよ激しくなり、また雄二と明久の仲はだんだん既成事実化されつつある。そして、ふたりの怪しい関係に嫉妬する霧島さんの拷問も絶好調。ラブ方面では大きな進展はないものの今巻もむやみと楽しかった。ほんとに良い意味でいつもどおり。
姫路さんも、美波も、秀吉も、明久もみんなかわいい!
次はまた試召戦争がらみになりそう。……最後に出てきた召喚獣のバグって、やっぱり、その、良い意味で装備が外れてしまうとかシースルーとかそういう感じなんだろうか。とにかく楽しみ。

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親しみやすい最強系主人公『鋼殻のレギオス』

雨木シュウスケ鋼殻のレギオス富士見ファンタジア文庫

鋼殻のレギオス (富士見ファンタジア文庫)

鋼殻のレギオス (富士見ファンタジア文庫)

大地が汚染されたはるかな未来、人々は自立移動都市(レギオス)に集まり、汚染獣の来襲におびえながら暮らしていた。武芸を捨て、過去を隠して学園都市ツェルニにやってきたレイフォンだったが、生徒会長にその能力を見抜かれ、都市を守るための戦いに巻き込まれていく。

重い過去を持つ主人公に、銀髪白皙の美青年生徒会長&その妹。いろいろベタだけど、その王道っぷりが逆に新鮮だった。なんとなく『風の大陸』とか『魔術士オーフェン』とか、ちょっと古いラノベを思い出させる内容。すごく「富士見ファンタジアらしい作品」だと言ってもいいのかもしれない。

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ランキング記事を書くのは恥ずかしいけど

本来、作品に順序や点数をつけるのはあさましくて恥ずかしい行為。客観的なランキングなんてありえないのだから、個人がかってに決めたランキングはもちろん、多数の識者・レビューワをそろえた「まとめ本」もみな等しく間違ってて恥ずかしいものだと思う。
でも、その恥ずかしさに耐えて「俺のナンバーワンはコレ!」「これが今年のオススメ!」と言い切るパワーは重要なんじゃないだろうか。だから、僕はランキング記事やオススメまとめ記事が大好き。そんなにすすめるなら「観てみようじゃないか」or「読んでみようじゃないか」と思ってしまう。
今年は僕も、恥ずかしさになんかはねのけて、もっと自分の好きな作品をアピールしていきたいものです。

2008年ラノベ極私的ベスト10&「2008年ラノベまとめ」のまとめ

ベスト10などという大仰な企画ができるほど読めてないんですが、個人的に「コレダ!」と思った作品群を挙げていくことに。えらそーに順位などつけてしまっておりますが、大晦日のヒマが悪いということでご了承ください。何かの参考になれば幸いです!
ノベルスやハヤカワ系、講談社ボックスなどはあえて外し、いわゆるラノベレーベルの文庫に絞っております。

※「『2008年ラノベまとめ』のまとめ」を更新(1月3日)
id:y883p2さんが「08ベストまとめの集計(Fall Cherry)」というエントリを書いておられます。集計おつかれさまでした。ところで、y883p2と書いてレトスと読むということでよろしいのでしょうか?(1月6日)

10位 田中ロミオ『AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜』ガガガ文庫

AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

田中ロミオ中二病というテーマに真っ向勝負を挑んだ1冊。『人類は衰退しました』と併せると、2008年は田中ロミオイヤーと言ってもいい一年だった。

9位 渡瀬草一郎輪環の魔導師4』電撃文庫

輪環の魔導師〈4〉ハイヤードの竜使い (電撃文庫)

輪環の魔導師〈4〉ハイヤードの竜使い (電撃文庫)

空ノ鐘の響く惑星で』『パラサイトムーン』の渡瀬草一郎による異世界ファンタジー。バトルも盛り上がってきて、だんだんとエンジンがかかってきた!

8位 上遠野浩平『沈黙ピラミッド―ブギーポップ・クエスチョン』電撃文庫

ブギーポップ・クエスチョン 沈黙ピラミッド (電撃文庫)

ブギーポップ・クエスチョン 沈黙ピラミッド (電撃文庫)

ブギーポップシリーズの最新刊。三角関係に悩む少年少女、非情なようで人間味溢れる合成人間たちと、このシリーズらしい魅力がぎっしり詰まった作品。

7位 うえお久光『シフトIII』電撃文庫
[rakuten:hyoutan:10013297:detail]
ハードカバーで展開していたシリーズが電撃文庫入り&最新刊リリース! ちょっと殺伐としたMMORPGっぽい世界観に引き込まれた。

6位 川上稔境界線上のホライゾンI 上・下』電撃文庫

終わりのクロニクル』で、「分厚いラノベとはこういうものだ!」とばかりに物量作戦を展開した川上稔の新シリーズ。偏執的なまでの設定量に圧倒される。

5位 林亮介迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル?』GA文庫

迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル? (GA文庫)

迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル? (GA文庫)

かつてWEB上で連載されていたウィザードリィ小説の商業版。京都に出現した迷宮に挑むパーティの青春と死を描く殺伐系現代ファンタジー。最も続きが気になるシリーズのひとつ。

4位 中村恵里加ダブルブリッド10』電撃文庫

ダブルブリッド〈10〉 (電撃文庫)

ダブルブリッド〈10〉 (電撃文庫)

「怪」とヒトの愛と痛みを描き続けた物語がついに完結。血と肉と骨の向こうにはなにがあるのか!? 2008年には、このほか短編集『ダブルブリッド Drop Blood』もリリースされた。

3位 田中ロミオ人類は衰退しました3』ガガガ文庫

人類は衰退しました 3 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 3 (ガガガ文庫)

衰退したヒトと、「妖精さん」たちのほんわかした、でもどこか毒が効いたSFストーリー。怠惰でズルく、ダメな主人公がかわいすぎる。

2位 井上堅二バカとテストと召喚獣3.5』電撃文庫

バカとテストと召喚獣3.5 (ファミ通文庫)

バカとテストと召喚獣3.5 (ファミ通文庫)

大人気シリーズの番外編。「秀吉の水着」の衝撃に魂を抜かれる! このほか本編の4巻と5巻もリリースされた。……5巻はまだ読めてなかったりします。

1位 竹宮ゆゆことらドラ8!』電撃文庫

とらドラ!〈8〉 (電撃文庫)

とらドラ!〈8〉 (電撃文庫)

笑いと感動のシリアス成分入りラブコメディ。アニメも現在放送中。今年は7巻から9巻までの3冊が発売された。修学旅行編の8巻では、ついに各キャラの感情が大爆発を起こし、シリアス展開がはじまった。最終巻に向けて一気に走り始めた印象。

■超不完全版「2008年ラノベまとめ」のまとめ
ついでといってはなんですが、他のブログ・サイト様のラノベまとめも挙げておきます。僕なんかより、はるかに冊数を読みこなしているラノバーばかりなので、チェックすれば2008年のラノベ界が見えてくるはず!

2008年オススメのライトノベル@ラノベオフ版(平和の温故知新@はてな)

2008年まとめ(灰色未成年)

2008年 ライトノベルな総決算(MOMENTS)

読了2008(SSMGの人の日記)

2008年ライトノベル個人的ベスト10(ウィンドバード::Recreation)

月ベストと年ベスト(好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!!)

管理人おすすめの一冊目のライトノベル:2008年度版(いつも感想中)

「Something Orange」2008年のベスト。(Something Orange)

2008年オレ内部ラノベベスト3(DAIさん帝国 )

2008年に読んだ本まとめ その1(今日もだらだら、読書日記。)

エロ・ライトノベル3(うぱ日記)

2008年まとめ(FULL MOON PRAYER)

今年度のライトノベルまとめ(厨房公論)

08年ライトノベルMyBest5(Fall Cherry)

今年の3冊(まあいいか。)

When的ランキング2008 ライトノベル編(彩彩華美)

2008年を思い出す(ライトノベルとか備忘録:基本ネタバレにつき注意)

今年のお気に入り(いつも月夜に本と酒)

2008年ライトノベルベスト 部門別ピックアッップ(まいじゃー推進委員会!)

私家版2008年ライトノベル ベスト10(三軒茶屋 別館)

2008年ライトノベルマイベスト10(私的ファイル deltazulu 記録再開)

では、よいお年&よいラノベを!

ごらんの有明だよ!

というわけで、コミケで人波に揉まれてきました。

同人ソフトが配置された西館はいつも以上に混雑していたような気がする。そのせいか、完売して手に入らなかったものも多い。とくに『うみねこep4』が早々に売り切れてたのは意外だった。やはり、東方&ボーカロイドのパワーが大きかったのだろうか。東じゃないから怖くないもん!とか言ってる場合じゃないですね。
ああ、そうそう。紙袋的にはNavelが目立っていたような気がします。

大手エロゲブランドのリリース間隔について

・人気メーカーのリリースが停滞
Keyはファンディスクのみで完全新作なし。Navelも『俺たちに翼はない〜Prelude〜』のみで、TYPE-MOONに至っては3年にわたってPCゲームのリリースが止まっている。Leafは、『君が呼ぶ、メギドの丘で』がギリギリ間に合う予定。強いコンテンツを持つ会社ほど、PCゲームの制作から遠ざかる傾向にあるように感じる。大作化によって制作期間が長くなっていることもあるのだろうが、少々心配になる流れ。

先日、「2008年10大エロゲニュース」というエントリのなかで上のように書いたところ、Half Moon Diaryさんからいいツッコミをいただいた。こちらの「4大エロゲメーカーの2008年の動きをまとめてみた」という記事ですね。アリスソフトLeaf、Key、TYPE-MOON、以上4社の今年の動向を挙げた上で、「総合すると、これらのメーカーがPCゲームの制作から遠ざかっているようには感じられませんでした。」と書いてらっしゃいます。
自分の書いたことと照らし合わせながら読み、いろいろ考えさせられるところもあったので、ちょっと書いてみたい。
では、まず反省点。

■特定ブランドのイメージに影響されすぎた
「人気メーカーのリリースが停滞」と書いたとき、頭にあったのはKey、TYPE-MOONLeafNavelオーガストなどなのだけど、正直、KeyとTYPE-MOONの動きに判断を左右されすぎた。
Keyは『AIR』(2000年)と『CLANNAD』(2004年)のあいだにも4年のブランクがある。また、TYPE-MOONは創業以来、『Fate/stay night』の『Fate/hollow ataraxia』の2本しかリリースしていない。一般化して考えるには、特殊すぎる事例だろう。

■リメイク・ファンディスクの制作を軽視しすぎた
ヒットしたコンテンツを持つブランドは、リメイク・ファンディスクの開発に注力する傾向があり、そのぶん新規タイトルは少なくなる。しかしながら、これは「PCゲームの制作から遠ざかる」という話とは別問題。もともとエロゲブランドのリリース間隔は年1本程度であることが多く、リメイクなどの事情が絡めば数年間のあいだ新規タイトルが出ないことは普通にある。Navelなどは、全5作のうち3作がデヴュー作『SHUFFLE!』関連なのだけど、これを「停滞」と見るのは問題があるだろう。
イメージに引きずられて、実際以上に大きく見てしまった嫌いがある。

■数年のスパンで見ると……
しかしながら、大きな流れとしてみると、やはり新作リリースのペースは落ちているように見える。
Leafは、1995年の創業から2006年まで、年1作以上のリリースを続けていた。オーガストも2002年の創業から2005年の『夜明け前より瑠璃色な』までは毎年1作以上。Overflowは1999年創業の2006年(『Summer Days』)まで毎年リリース。
Navelは2004年創業で2006年までは毎年。アージュは1999年創業の2001年の『君が望む永遠』まで毎年。ただし、アージュはファンクラブ限定や別ブランドを数えると、実は2008年まで途切れることなく発表を続けているし、Navelも別ブランドのLimeを含めれば毎年1タイトル以上制作している。

アリスソフトニトロプラス、CIRCUS、戯画(パートナーブランドを除いてもかなりの量)など手数が多いブランドもあるので、上記数社の例を大きく受け取りすぎるのは危険。
……なのだけど、やはり2006年あたりを境目に、リリースタイトルを減らし1タイトルあたりの収益を増大させる戦略をとるブランドが増えてきているように思われる。その戦略のひとつが、Leafアクアプラス)、オーガストARIA)がすすめる自社CS移植版だろう。Key Sounds Labelの音楽CDや、TYPE-MOONの書籍なども含めていいかもしれない。

とはいえ、各社それぞれに事情なり意図なりがあることを、「停滞」と言い切ってしまったのは大ざっぱすぎました。あと、なんというか、これを「2008年のニュース」と言っていいのかどうかは……やっぱ微妙ですね。とにかく、ツッコミありがとうございました!